千三つ(せんみつ)
2022年02月7日
千三つとは、元々は「千回のうち3回ぐらいしか本当のことを言わない嘘つき」という意味の古い俗語ですが、マーケティングの領域においては「1000件のうち3件の確率」、つまり反応率が0.3%程度という意味になります。商品開発の難しさやインターネットのバナー広告のクリック率なども概ねその確率であることから、「千三つ」と表現されることがあります。
その昔、先代に何度かアイデア商品を提案したとき決まってこの言葉が返ってきたことを思い出します。初めて自社製品を世に出した時も販路開拓に躓きこの「千三つ」という言葉を実感しました。この言葉をまともにとらえるとあと332個商品を開発してやっと1つのヒット商品に当たるということになります。
当社の生業はプラスチック成形ですので製品を作るためには金型が必要になります。特に射出成型の金型は小さいものでも数十万から数百万かかります。これをこの確率で投資していたのではとても採算が合いません。またたとえいいものが出来てもホームセンターなど数を捌いてくれる小売りの店頭に並べるまでの販路開拓は非常に難しいものがあります。先代が私に慎重さを促したのも頷けます。
ただインターネットの登場でこの事情は大きく変わって来ているように感じます。まずはアイデア発案の段階で市場ニーズの調査、マーケティングがやりやすくなったこと。これによってアイデアが単なる思いつき、思い込みから取捨選択とブラッシュアップができ、「千三つ」から「百三つ」ぐらいまで確率が上がったように思います。そこからさらにネット販売でダイレクトに市場に投入できることで販路開拓リスクが減り「百三つ」から「十三つ」ぐらいになったように感じます。ここまでくれば打率3割。プロ野球でいえば一流打者のレベルです。またユーザーからの声がダイレクトに届くためそれを活かして発売してからも製品の改良を続けていけばさらにヒットの確率は上がります。
そんな感じで現状はヒット商品3割、投資が回収できる程度の商品が5割、売れない(投資回収不能)商品が2割といったところでしょうか。ただその2割の売れない商品の中にも以前「リベンジ商品」のコラムでも書いたように不振の理由を分析し発案時に思い描いていたことと何が違ったのかを突き詰めていけば次のヒットにつながることが多いように思います。商品自体を何も変えなくてもターゲットやパッケージをを変えるだけで大ヒットしたというのはよくある話です。
課題はマーケティングスキルを上げユーザーの声を商品のブラッシュアップにつなげヒットの確率を上げながら失敗を恐れず新商品開発を続けていくことだと思っています。