セミー工業社員の日常

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ちょっと昔話:カーボンヘッド

セミー工業社員の日常

2011年11月24日

弊社ではちょっと昔にインジェクションでゴルフドライバーのヘッドを作っていた時期がありました。
 プラスチックであの硬いゴルフボールを力いっぱい叩くのですから非常に強度を要求されましたが、だからといってプラスチックの塊では重くて振れません。軽くて割れないが最要求事項でした。
 まず軽くするために中を空洞にする必要がありましたが、この中空ってやつが射出成形にとっては一番の難題。解決策としてまず中空部分になる芯材(コア)をつくりそれを金型にセットしてお饅頭のように外側を樹脂成形で包み込み、あとから芯材を取り除くことにしました。
問題は芯材をどうやって取り除くかでしたが、水で溶かすのが一番だろうということになりました。
 となると問題は芯材の材料を何で作るかということ。樹脂の成形温度200℃以上に耐えてかつすぐ水に溶ける物質。答えは尿素樹脂(ユリア樹脂)に水溶性樹脂を加えたもの。これを直圧成形で作りました。

カーボンヘッドの開発には協力会社の社長さんに多大なご協力をいただきました。芯材を成形するための特別な設備や芯材を溶かした水溶液を回収する設備を 作っていただいたりしました。尿素樹脂がいくら水溶性樹脂だからといって簡単に溶けるものではありません。流水にしたりホースをヘッドに突っ込んだりと 色々と工夫を凝らしていただきました。また尿素樹脂は脆く成形中に割れたり熱で溶けたり苦労の連続で、その度に社長さんが色々アイデアを出して解決してい ただき、入社したてで何も分からない私にとっては感心することばかりでした。         

さて本体の材質はABSとポリカーボネートのアロイ(混合物)を使いました。ただプラスチックですのでボールを打ったときの打球音はポコッとなんとも頼 りない音でした。そこで高音を出すためにカーボンフィラーを練りこんだりしました。当時相当高価な材料になったと記憶してます。

 そんなこんなで苦労の末、製品化に成功し特許も取得しました。M社さんからバンガードαスカイクロスというネーミングで発売されたのを皮切りにグランドモナークブランドでも発売され好評をはくしました。
た だ時代の流れとは非情なもので、S社のSヤードの大ヒットを皮切りに現在のチタンドライバーがあっという間に市場を席巻しカーボンヘッドは結局この2機種 のみという短命に終わりました。しかしこの時の経験はものづくりに対する姿勢をその社長さんから学ばせていただいた案件でした。

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